Mompreneurs

注目のママプレナーにインタビューMOMPRENEURS STORY

# 009

船曳 桜子

Sakurako Funabiki

Architect

「2児のママ」と「建築家」、
合わせて“自分の顔”と受入れて

建築の世界……この業界には、どうしても男性社会のイメージが色濃く残っています。そのなかで、2人の子どもを育てながらご自分の事務所を経営しているのが、建築家の船曳桜子さん。船曳さんは同じくママプレナー®としてバリバリと働いていたお母様の影響を受け、自分自身も手に職をつける道を選んだそうです。しかし仕事に対する強い責任感のあまり、これまでさまざまな壁に突き当たってきました。今回は船曳さんがこれまで歩まれてきた道のりをたどるとともに、ご家族のことやこれからの目標など、さまざまなストーリーをうかがいました。

船曳 桜子 船曳 桜子

2016/7/30

Profile

船曳桜子(Funabiki Sakurako)/建築家、船曳桜子建築設計 一級建築士事務所代表。武蔵野美術大学建築学科卒業後、留学、設計事務所勤務などを経て、30歳のときに一級建築士の資格を取り、2006年に自身の建築事務所を開設。新築住宅や、マンションのリフォーム、店舗設計など幅広く手がけている。6歳と2歳になる男の子のママ。

◆公式サイト http://www.funabiki.net/

働く母の背中を見て育ち、 “一生できる仕事”を探す

働く母の背中を見て育ち、 “一生できる仕事”を探す

「うちは4人兄弟なのですが、子育てをある程度終えた母は、40歳を過ぎてからバリバリ働いていたんです。その背中を見て育ったからか、自分も仕事は一生続けていきたいと自然に思っていました」

現在、一級建築士として都内に事務所を構えている船曳さん。もともと絵を描くことが得意で美大に進み、そこで建築の仕事と出会います。「建築は一生できる仕事になる」とご両親にも背中を押され、建築家を志すようになったのだそうです。

建築の世界では、「いつか独立をしたい」と考えるのはごく自然なこと。しかし船曳さんがそうした想いを抱いた理由はもうひとつありました。

「父親が大学で教えていた関係で、小さいときから優秀な女性をたくさん見てきました。でも、とても優秀で、いい大学を出て一流の企業に勤めたはずのお姉さんたちが、結婚してどんどん仕事を辞めてしまうんですよね……」

女性が企業で働き続けることの難しさに触れるうちに、「自分はそうした組織に入っても、生き残れそうにない」と感じるようになったといいます。

一般企業に就職することを選ばずに、20代の間に国内外含むいくつかの設計事務所で修行を積んだ船曳さん。実際に一級建築士の資格を取り、独立したのは30歳のときでした。

仕事より、子ども優先でもいい。 素直にそう思えた瞬間

仕事より、子ども優先でもいい。 素直にそう思えた瞬間

独立後、船曳さんは旦那様と出会い結婚。3年後には第一子を出産しました。ただ出産後しばらくの間、施主さんをはじめとする関係者に対して、自分に子どもがいることを言い出せなかった時期があったといいます。

「子育てしているからといって、周りに迷惑をかけてはいけないし、仕事を優先しなきゃいけない。そうじゃなければ認められない、という気持ちが強くて。だから当時は子どもが熱を出してもそれを伝えずに、どうにか他の理由をつけて仕事を調整することが多かったんです」

しかしあるとき、どうしても外せない大切な打合せの前の日の夜に、お子さんが発熱。今からでは外部のサービスには頼めないし、旦那様も海外出張中。実家のご両親も、船曳さんいわく「私の10倍は忙しかった」ため子どもを預けたことがなく、八方ふさがりに……。

途方に暮れた船曳さんは、思いあまって、真夜中にお母様にSOSの電話をかけました。そしてそのとき、お母様からかけられた言葉にハッとさせられたのだとか。

「そのとき母に、『あなた、子どもと仕事どっちが大事なの?』といわれて。その言葉を聞いて、ああ、子どもを優先していいんだってはじめて思えたんです。それまでずっと、うちの母は子どもより仕事を選んできた人だと思っていました。その母に言われたからこそ、呪縛がとけたような気持ちでしたね」

このできごとをきっかけに、ある程度のことは仕方ないと割り切り、仕事相手に対しても「子どもが熱を出したので調整させてください」と言えるようになったそうです。

建築家は先の長い職業、 子どもの成長後に大きな仕事を

建築家は先の長い職業、 子どもの成長後に大きな仕事を

その後2人目のお子さんを出産してからも、船曳さんは自分のペースで建築の仕事を続けています。最近は、母としての視点が仕事に活きることも増えたそうです。

「ひとつの家族が家を新しく建てたり、住まいをリフォームしたりする理由は、お子さんにあることが多いんですよね。私自身も子育てをしているからこそ、施主さんと同じ目線に立つことができるようになりました」

さらに、いずれお子さんが成長したあかつきには、さらに建築家としてステップアップしていきたいのだとか。

「今は子育てと並行しているので、どうしても取り組める仕事に制限が出てきます。そのうち子どもから手が離れたら、またコンペなどの仕事を手がけたいと考えています。やはり建築をやっているからには、大きな仕事をしてみたいという気持ちがありますから」

建築の世界では、40歳でも“若手”と呼ばれる世代。これから先も、長い時間をかけて仕事に取り組んでいくことができると、船曳さんは考えています。

「ある程度のことは割り切れるようになった今でも、仕事では、子どもがいることで気まずい思いをしたり、悔しい気持ちになることもたくさんあります。これからもきっと、それがゼロになることはないでしょう。でも私は、2人の子育てをしながら建築の仕事をしていることまで含めて“船曳桜子”なんです。そうした生き方を、一番身近にいる家族が認めてくれているから、強くいられるのだと思います」

夫婦がお互いを尊重して、居心地のよい家庭に

夫婦がお互いを尊重して、居心地のよい家庭に

今、家庭の居心地のよさにはかなり満足しているという船曳さん。「もしかしたら夫は不満を抱えているかもしれないですけど(笑)」といいつつも、ご夫婦でうまく家事・育児を分担されているようすです。

「夫は海外に住んでいた経験があり、自分も当然、家事・育児をやるものだと思っていたようです。今のところは、朝、子どもたちにご飯を食べさせ、支度をして保育園に送っていくのは夫の担当。私はそれを見送ってから仕事にいき、19時くらいに子どもを迎えにいく、というのがひとつのパターンですね」

ただしお互いの仕事にかなり繁閑差があるため、状況に応じてフレキシブルに対応できるようにしているそう。

「夫が海外出張で家を空けるときは、家庭のことは一手に私が引き受けますし、私がコンペ前で事務所に缶詰状態になっているときは、夫が協力してくれます。夫は私の仕事のことも全面的に応援してくれているので、本当にパートナーに恵まれたと思っています!」

 


 

[編集部より]バリバリと働くお母様に育てられたという船曳さん。子育て中の女性が少ない業界の環境と、「仕事優先が当たりまえ」という価値観のなかで、きっと今までさまざまな苦労をされてきたのだと思います。しかし今は母親であり、そして建築家でもある、というご自身の生き方に対して誇りをもっていることが、言葉の端々から伝わってきました。それを支えているのが、ほかでもないご家族の存在であるということも。(Photo by Junko Sugai/Text by Yu Oshima)

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